二人静

梅若会定式能 (新春公演 二日目)

日 時 平成十八年一月十五日(日)午後1時開演
会 場 梅若能楽学院会館

二人静
吉野の勝手明神では毎年正月七日に菜摘川の若葉を摘んで神前に供える。
今日も菜摘の女が出かけた。松の葉にはまだ雪が残っている。そうした小途で女(ツレ)が菜を摘んでいると、突然誰かに呼びとめられた。
それは不気味な女(シテ)で、「明神へ帰って神職に伝えてくれ、罪深い自分のために一日経(頓写)を書いて回向してほしいのだ」といい、「もし人々が不審に思うようならばその時自分がお前に憑いて名乗るから」といったかと思うとその姿は消えた(中入)。
驚いた菜摘女はすぐ戻って神職(ワキ)に告げた。そして「まるで信じられないことですが」といいかけると、その様子は一変して憑きものがした。「あれ程依頼したのに何故信じないか」と、自分自身を叱る、その声はまるで別人のような威厳がある。
狂気した菜摘に神職が問うと、憑きものは「この地で義経に捨てられた者(静御前)」であった。しかもこの社の宝蔵に、往年の静の舞衣装があるというので開いてみると、それがあった。女はそれを身につけ(物着)で、思い出の歌を謡いながら美しい舞を舞う。
するといつか後方にも、全く同装の女(後シテ)がもう一人いて、全く同じように舞っている(相舞り序ノ舞)。
それは殆ど一人の舞が、二人に見えているようである。