墨ぬり
第九回 さがみはら能
日 時 平成十七年十月八日(土)午後五時始
会 場 グリーンホール相模大野大ホール
◊ 橋弁慶
比叡山の武蔵坊弁慶は五斎の天神へ丑の時参りをしている。
今夜がその満参の日である。しかしお供の者に「近頃五条の橋には十二・三才の少年が現れ、人を斬りまくり、その動作はまるで 蝶か烏のように敏しょうで神変不可思議との事です。危いから今夜は中止にした方が良い。」と忠告される,弁慶は一度はやめよ うとするが逃げるようで無念と夜明けを待つ。
一方、母の厳命で明日は鞍馬山へ戻らなければならない牛若丸は今日が最後の夜で ある。
例の通り五条の橋で通行人を待ち伏せていると夜明け近くなって大男の弁慶がやって来た。
牛若丸は薄衣を頭からかけて いるので弁慶は女だと思い通り過ぎょうとした所を牛若丸は弁慶の長刀の柄元を蹴り上げた。
驚いた弁慶は斬りかかると牛若丸 も打合せ戦うが、遂に弁慶は長刀を打落とされどうしようもなくぼうぜんとして降参する。
牛若丸に名を尋ねるとこれが源家の 御曹子であった。二人の堅い主従開係はこうして生まれた。
◊ 八島
(前場)
八島の浦に立ち寄った都の僧に渙翁(源義経の化身)が源平合戦の模様を語る。
〔後場)
僧の夢の中に甲胃姿の源義経が現れ「今夜のように月が冴えた晩、不覚にも引潮の波に弓を取落し、敵船近くまで馬を泳がせて 漸く取り返した。」と身ぶり手ぷりをまじえて話をする。カケリでは地獄でもなお戦い続ける有様を示す。
壇の浦の戦いは源氏の楯が波のように並び、平家の兜は星かげのように光り、戦いの声はあちこちに聞こえる。
しかし僧の夢が さめると、そこには海上に群れる鴎の声や浦を吹く風の音があるのでした。
※今回の半能は後場を演じます。
◊ 墨塗
訴松の為、都に滞在していた大名が、無事解決し、帰郷するに際し、かねて馴染みの女の許へ別れを告げに行く。女は悲しげに 泣くが、実は髪水入れの水で目をぬらして涙と見せかけていたのである。
それに気づいた太郎冠者は水と墨に取り替えておく。
女の黒くなった顔を見て驚いた大名は初めて女の不実を悟り恥をかかせたと形見に鏡を与えてぜひにと見せる。
女は肝をつぶし 怒りだし両人も追い込んで行く。